僕が消費を見直すきっかけ

 きっかけは、20歳の時に買った27万円の自転車だった。買ったは良いが全然幸福になれなかった。まだ若く感性が強かったからかもしれないが、僕はこの所有で心を満たすことが出来なかった。
 逆に、余命がどのぐらいあるかわからないと感じたとき、贅沢を覚悟で僕はセカンドカーとして44万円の中古車を買った。購入の決断主体は感情ではなく論理であった。死ぬ前にやっておくべき事は、どんなに気が引けてもひとつひとつ実現していかねばならないという強烈な快楽追求姿勢があった。投げやりな気持ちがあったことも否定はしない。
 しかし、初めてその車に乗ったその夜、僕はその車の中で結構な時間泣き続けた。これが、モノというくだらない代物で本当に心が満たされた初めての経験であった。その日の日記に書いたの言葉は「僕が何年か後に生き残っていたとしたら、この車に救われた事を知るだろう」といったようなものだった。
 未だに、この車に自分が救われたという実感はないが、前者の経験も後者の経験も、様々な幸運が重なって起こった事象だとはわかる。

 今、考えてみると、後者の幸運こそが今の僕の消費姿勢の基本を作ってるのかもしれないね。