多くの経営者が出来ていない基本的なこと

 「自分に足りないものを把握して、それを補う」という本当に初歩的な動作が、ほとんどの小企業(平均勤続年数3年以下の従業員5人ぐらい)の親分には出来ていないし、「自分に足りないものを、自分の成長以外の方法で補う」ということは、ほとんどの中企業(平均勤続年数5〜10年で、従業員数十人ぐらい)の親分に出来ていないことを改めて痛感する。

 その壁を越えないと、企業がそれ以上になることはないと思う。僕はたまたま、人の力を借りるのが好きで、モジュール化できない仕事に興味が無くて、いつも身を引いて組織として成り立たせることばかり考えている怠け者だが、この感じ方、考え方は、スタートダッシュに躓かなければ、年商30億を超える壁を越えるのに非常に有効であることがわかる。

 人を使うのが下手で社員がどんどん辞めていくのであれば、社員がどんどん辞めないようにするためだけに人を雇えばよい。そういう職能主義は、結果的に大組織化した場合に求心力に不安を抱えるが、社員が定着しないのでは大企業化する可能性もなく全く意味がない。逆に、好ましくない社員が定着しすぎる企業もある。こちらはもう少し簡単で、嫌われ役の首切り社員を置いておけばよい。このパターンは年商2億円ぐらいの企業に良く見る気はする。

 しかし、このラインをワンマン系の社長の努力(主に成長力)と管理力で乗り切ってしまうと、年商は10〜20億円ぐらいの壁までいけるようだ。こちらはもう倒産する可能性が低いので、思考力のある中間管理職の不足と後継者の不在に悩まされることとなる。ただし、この場合も従来業務では上場まで狙える可能性が低いことが多いため(社長の体力と労働力にあわせて社風と給与テーブルが作られているため労働散逸型が多い様に思う)、これ以上となると無理がありそうだ。

 起業前に自分の性向がわかっていれば、どこを目指すかの出口戦略もそれほどぶれないだろうから問題はないが、たいていの場合、起業するようなパワフルな性格の持ち主は出口戦略なんてカンケーないもんね。

 ものすごい仕事力を持ちながら、企業を全く成長させられない社長のことを思い出し、それが珍しいパターンでないことも今は知って、こんなことを思った。

 自分の性格を知らないのは僕も同じで、自らがワンマンになることなど今は心配していないが、昔は心配したものだった。性格は変えられないから、わかっている人は大型の雇用をしない。件の女社長もそうだし、戦略会計士も基本的にはそうだろう。で、僕の折衷として能吏タイプの番頭(いわゆる事務局長)を置くという戦略は、相当に良いセンいっていると思う。

 僕を足らないところの補佐に使える器と能力と性向を持つ社長はこれまでに一人だけ出会ったが、彼がそのことに気づかず、しかも特性の利用方法を間違えたのは、彼の企業家人生の中で最大級のミスだと思う(何も知らないのに勝手な言い草だw)。まぁそれほどのミスの程度は別にして、今後とも僕の有効活用方法に気づく可能性はゼロ(まったくのゼロ)なので不幸は顕在化しないけどね。

 僕もいろんな可能性を見過ごしていることであろうなぁ。そもそも僕の場合はほかに選択肢がないから後悔しようがないけどね。そういえば、彼もそうか。別の選択肢がない限界ぎりぎりの人生を送っている人にとって、気づきの多寡はそのまま人生の限界か。

 書くことで楽になるものはあるね。