ドラマ「JAG」

番組情報はこちら
 日本語スターチャンネルのもの
 http://www.super-ch.com/line/navy/

 英語のもの(imdb)
 http://amazon.imdb.com/title/tt0112022/
 (僕が某所で書いたベルナルド・ベリサリオ脚本というのは間違いで、ドナルドらしい)

 初めて見たのは関東にいた96年ごろだったか。まだ新作が出ているというのは驚きに近い。ファースト〜セカンド(?)シーズンのヒロイントレイシー・ニータムが、後日ボニー&クライドのヒロインになっていたのを見て驚いたことがある。ERが11シーズンだったので、それには及ばないものの、僕が見ている中ではこれほどの長寿番組はあまりない(アメリカは一年で3クール39回しか放送がないと聞いたことがあるが、日本の半年は26回。どうやって都合つけてるんだろう)。アメリカでは退役軍人協会などの強い後押しがあるんだろうかと思うし、この番組で志願する人も多いように思う。特に法務部。

 聞いた話では、アメリカの軍事費は2位から9位までの国を合計したよりももっと多いとか。その軍の中のしかも軍事法廷のドラマというのは、アメリカの論理がもろに出てくることばかりかと思いきや、そういう風に感じることはほとんどない。

 巧妙に強い意図が隠されているかと思って印象に残っているのがわずかに一回。細かいところは間違ってると思うけれど、大まかな筋としては、ニカラグアの山中で活動中の少人数部隊だったかが反政府ゲリラに捉えられて拷問にかけられていると思われる状況になり、軍紀に違反して部隊長が救援を行いその捕虜収容所を壊滅させてしまって裁判にかけられたとき。現地の反政府ゲリラに苦しめられていた住民だったかが出てきて裁判進行の意に反して証言台で語りはじめ「あなた達は仲間を助けに来た人を裁判で裁くのか」と言わせたとき。

 組織としての判断で救援しなかったのは政治的に複雑だったからだと思ったけれど、救援の方法は収容所の壊滅という乱暴な方法であり、まぁ、現地人にしてみれば迷惑なんだかありがたいんだか良くわんないかもしれないなぁと。

 そのほか、唯一、沖縄基地が出てくる回で、現地風景が僕らから見るとベトナムなどに近い印象があったのに違和感を感じたぐらいか。

 裁判になるものは、同盟軍との関係で政治的配慮が必要な事故や、訓練中の事故(これが一番多いか)、過去の脱走罪に関する裁判や、ベトナム戦争当時の虐殺が存在したかどうかなど上記の例を含むような戦闘中の事件に関する係争など、かなり多岐にわたる。

 全体にとにかく楽しめる設定と物語で、日本の冗長なドラマを見ている人には信じられないほど濃い45分を楽しめるのが海外ドラマの特徴だ。この物語も例に漏れない。



 さて最後にわずかに本題だが、憲法改正をして軍隊を持ちたいのなら「踊る大捜査線」や古くは「スチュワーデス物語」「エースをねらえ(だったっけ?)」「キャプテン翼」のように架空の話でも良いから、こうした流行ドラマをつくり、みんなの目を慣らしていくというのもあるのかもしれない。

 この意味、僕は映画の「スパイゲーム」にかなり憧れた。日本にもアレが欲しくなった。軍があろうが無かろうが、憲法改正をしようがすまいが、組織としての問題はあるにせよ、情報を専門に管理するエリート集団が必要なのは間違いなく、そのための人材育成や予算、国家観の形成を含めたああした組織が日本にあっても良いと思うが、日本が強くなることを望まない国は多いので、あまり歓迎されないか。軍事費なんて公共工事に等しくて実際の危機管理にどれほど役立つかなんてわかんないんだから、今は目立たないソフトの育成に血道をあげておくというのは考えられる対処だと思う。

 SASに数百人単位でテロ対策研修留学させても良いし、安全保障の観点からの原発自給率を考えても良い。それが意志決定者の目に触れるかどうかは別にしてね。旧軍の時代から見たくないものは見ない危機管理しかやらないという体質が変化しないのは、国民性なんだろうか。

 JAGがどれほどの現実を表現しているのかわからないし、実際にはそんな組織はないのかもしれない。どこの国の軍隊でもそれほどきれい事で物事が動くはずもないだろう。しかし、コロンボにせよ、ほかの海外ドラマにせよ、とりあえず優秀な人間が集まって組織の規律の中で動いていることは良くわかる。絶対に組織の一員としては働き得ない自分のことを棚に上げるのもなんだけれど、日本のドラマは踊る〜にしても、GTOにしても、組織体から半分外れることで行える正義やかっこよさを表現しているものが多く、これは組織の自浄能力の違いなのか、指導的立場にある人間の危機管理観の違いなのか、上に立つ者の能力だけの問題なのか、ちょっと面白いなと思う。

 まとまりないけど、他のドラマについてもこれからは書いてみます。