詐欺師と虚業家の華麗な稼ぎ方

 タイトルと作者の経歴(教授になるまでは一部上場企業の役員)からして、もっと軟らかい本かと思ったが、文調も内容もはるかに堅い本だった。三ヶ月先に生きているかどうかわからないような状況の時代、下っ端の詐欺師(ほんとのほんとに下っ端。寸借に毛が生えた程度)と数ヶ月行動を共にしていた(僕もやられたんだが)経験もあり、また、今はそうした合法からグレー程度の手法に通じているせいもあり、そっち方面で期待していたが、そうした具体的事例は殆ど書かれておらず、類型的な話に終始している。漠然とした予測の確認にはなったが、勉強にはあんまりならなかったかも。参考書籍が多いので、ここから広がる人は多いだろうし、これが役に立つ人は多いかもしれない。

 もっとも大切な一言は「優秀な企業家と優秀な詐欺師を統計的に隔てる方法はない」というようなくだりかな。記憶の中の感じでは。

 後半、実業と虚業の定義に関するくだりは、学者然とした考察が主体で、それが正しいのか間違っているのか僕には判断つかないだけに、そんなもんかいなというところ。直感では情報そのものに問題はないものの、その集積を行った結果の結論には、どこか飛躍がありそうな感じはする。特に資本主義歴史論のところ。矛盾をつくために読んでいるわけではないので、流し読みだけどね。

 あと、随所で繰り返しが多いね。なんでだろ。一般向けだからわかりやすくするために繰り返したのかな。何カ所も存在する各種類型に関しては、実際の生活に役に立つような書き方ではないことが多く(特に後半)、もう少し書き方があったのではないかと思う。もっと具体例が欲しかったなぁ。

 内容的には文体からしっかりした感じを受けやすいが、後半部分の情報評価は非常に難しく、そのまま信じるにはすこし厳しい。こういう本よりは前述の事例だけを積み重ねた「起業バカ」のほうがずっと実務的に役に立つような気がする。役に立たないから研究の対象になる。泥臭いことはどんなにやっても評価されない。企業人出身でありながら、そうした学者色が強かったことは本当に驚いた。

 じっくり考えて書くとこんな感じで繰り返しが増えるので、いつも乱文にしてたりする。あーあ。